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少年法は、刑法などの刑罰法令に触れたり、そのおそれがある20未満の少年に対して、保護処分と呼ばれる教育的な措置をとったり、成人と同様の刑事裁判にかけられた少年のための特別な措置を講じることで、少年の「健全な育成」をはかることを目的としています(少年法第1条)。
少年による違法行為に着目している点で、刑法的な側面を有していることは確かですが、保護処分の中には児童自立支援施設等への送致も含まれるなど、福祉的な側面も有した法律です。
ところで、少年犯罪は、しばしば増加ないし凶悪化していると信じられていますが、実際はそうではありません。
少年による刑法犯の検挙人数は、1990年代初頭は年20万人ほどでしたが、2021年には約2万人にまで減少しました。これは少子化が進行する以上のスピードです。
またいわゆる凶悪犯罪と呼ばれる殺人罪、強制性交等罪(旧強姦罪)、強盗罪は、ピークが1950年代後半から60年代にかけてであり、その後急速に減少し、近年は横ばいとなっています(ただし、強盗は90年代に一時増加し、また減少しました)。
10代半ばに非行率がピークに達し、成人に近づくにつれて減少するという傾向も、近年は見られなくなりつつあります。現代の少年たちは、戦後もっとも「安全な世代」と言えるのかもしれません。
しかし、このような状況にもかかわらず、2000年代に入って少年法はたびたび「改正」されてきました。
例えば、2000年の改正では、刑罰を科すことができる年齢を16歳から14歳に引き下げるとともに、一定の重大な犯罪の場合には、少年であっても原則として大人と同様の刑事裁判にかける「原則逆送」という制度が設けられました。
また2014年には、少年に対する刑の上限(と下限)が引き上げられ、より重い刑罰を言い渡すことができるようになりました。
さらに2021年の改正は、18歳・19歳の少年を「特定少年」とし、「原則逆送」の対象範囲を拡大したうえで、起訴後の実名報道(推知報道)を解禁しました。
こうしてみると、私たちの社会は、少年犯罪がもっとも少ない時代に、ますます彼・彼女らに対して厳しく接しているようにも思えます。
では、これからの少年法はどうあるべきでしょうか。
ある調査では、少年院に入院した男子少年の約3割、女子少年の5割以上が、身体的・性的・心理的虐待を受けた経験があると回答しています。また10代から20代の若者の死因には、自殺が常に上位を占めています。
子どもは、望むと望まざるとにかかわらず、親や社会に依存せざるを得ない存在です。そうすると、少年非行は私たちの社会を映す鏡と言えるかもしれません。
彼らとどのように向き合うべきか、社会はどうあるべきか、少年に近い年代の大学生のみなさんにこそ、考えてもらいたいと思っています。