会社の不祥事をなくすにはどうしたらいいの? 【高校生のための「法学」講座 10】
近年、日本の有名企業で不祥事が相次いでいます。報道によると、中には会社の経営陣が、経営上、重大な問題や法令違反となりうることを知りつつ、それを隠ぺいしたともとれるケースもあるようですが、当然ながら不祥事が起こると、取引先や従業員、株主等多くの人に迷惑をかけることになります。どうすればこれを防ぐことができるでしょうか?
株式会社の「経営トップ」といえば「社長、会長」といった代表取締役ですが、会社法は彼らの暴走を防ぐため、様々なルールを設けています。比較的大きな株式会社では一般に、株主の集まりである株主総会で取締役を複数選び、取締役会を組織させます。取締役会では、会社経営上の決め事を合議によって決定するほか、代表取締役を選び、決定したことを実行させ、その仕事ぶりを監督することになっています。加えて、取締役会の外から取締役らを監督する「監査役(会)」というお目付役もいます。このように二重、三重の監督機関を設けているにもかかわらず、なぜ不祥事は起こってしまうのでしょうか?
その理由は色々考えられますが、一つには、日本の会社での取締役の選び方に問題があるといわれています。終身雇用制の中、その会社に長らく勤めた従業員の中から、年功序列で取締役、代表取締役を選ぶことが多いため、代表取締役が「先輩」、その監督役であるはずのその他取締役らは「後輩」となってしまって代表取締役に厳しいことを言えず、ときにはみんなで都合の悪いことを隠してしまいます。そこで近年は、会社の従業員出身等でない、しがらみのない人を取締役や監査役(社外取締役、社外監査役)に加えるよう求められていますが、適任者はまだまだ少なく、また社内の情報が社外取締役・監査役に十分に提供されなければ、なかば「お飾り」となってしまうこともありえます。
会社の不祥事を防ぐためには、上記のような監督機関の構築や、より具体的な、(監督)業務規程やマニュアル作りといった、「組織」的な取り組みも大事ですが、究極的には取締役、監査役ら「個々」の資質向上が重要になってきます。法令や会社内での取り決めを守り、会社の利益を優先し、代表取締役にではなく、会社に対して・・・・・・忠実に職務を全うする取締役や監査役になるよう(実は、民法や会社法も取締役や監査役にこういった義務を課しています)、若いうちから地道に従業員教育をしていくことが必要でしょう。
※イメージ写真は、立正大学法学部 堀井 智明ゼミの授業風景です