カンニングは罪に問われるの? 【高校生のための「法学」講座 1】
試験で、他人の答案をこっそりとのぞいて答えを写すという原始的なものから、スマートフォン×SNSを用いるといったものまで、様々な形態がある「カンニング」。ルール違反の許されない行為であり、カンニングが発覚すると不合格となることは当然ですが、それとは別に犯罪は成立するのでしょうか。
カンニング=こっそりと「盗み」見ることからすれば、こっそり盗む=窃盗罪(刑法235条)が適用されるようにも思えます。しかし、日本の裁判所は、問題の解答という「情報」自体を窃盗罪の対象と認めていません。窃盗罪の対象となるのは、例えば本や食品といった「(財)物」に限られる、というわけです。この裁判所の考え方を前提とすると、カンニングは窃盗罪では処罰できない、ということになります。
では、カンニングは刑法では処罰されず、やり放題なのでしょうか。
たしかにのぞかれた人を被害者とする窃盗罪は成立しませんが、カンニングによる不正受験が横行すると、試験に対する公正性・信頼性が失われ、入試業務という大学の重要な業務が妨害される危険があります。したがって、「大学に対する」業務妨害罪(刑法233条)が成立する可能性があります。
これだけでは、カンニングされた被害者の気持ち(被害者感情)は癒されないようにも思えます。この点、カンニングの被害者が加害者に対して、民事上の損害賠償請求をすることは可能です。しかし、個人情報保護の問題や、どの問題をカンニングで正解したのかを特定し証明するのが困難なことから、あまり現実的ではありません。
現行法のもとでは、試験中は他人に、カンニングされないように注意することが最善策だといえます。
※イメージ写真は、立正大学法学部 友田博之ゼミの授業風景です