多数決はいつも正しいの? 【高校生のための「法学」講座 6】
高校生の皆さんも、クラス会などでなにかを決める時に、多数決を使うことがあるのではないかと思います。法律の世界でも同じで、たとえば立法機関である国会での決定も、「出席議員の過半数でこれを決し」と憲法に定められています(憲法第56条第2項)。
しかし、少数意見を尊重することも大切だ、と同時に教わって、戸惑ったことがある人もいるのではないでしょうか。多数決では、けっきょく少数意見は無視されてしまいます。皆さんだったら、多数決と少数意見との関係を、どのように説明するでしょうか。
実は、多数決は唯一の正しい答えを導き出すとは限らないのです。最近はアイドル・グループが投票で順位を決めたりもするので、ここでは一例として仮に3人組のグループへの投票を考えてみましょう。ファンの数は30人と仮定します。
1位のAさんが13票、2位のBさんが10票、3位のCさんが7票を獲得したとします。普通に考えれば、グループのセンターはAさんですね。しかしもしかしたら、Cさんに投票した人たちは「Aさんがセンターになるくらいなら、Bさんの方がいい」と考えているかもしれません。
そのような場合、あらためて1位のAさんと2位のBさんで決選投票をする、という方法を取ったらどうなるでしょうか。BさんにCさんの票が加わり、Bさんが17票を獲得して、センターはBさんということになります。つまり、多数決といってもいろいろなやり方があって、やり方次第で順位が変わってしまうのです。
こうして見ると、多数決は確かに有力な決め方のひとつではありますが、そこでの結論が唯一の正解だとまでは言い切れません。ある決め方で少数派だった人も、別の決め方では多数派になるかもしれません。だからこそ、「多数決だから」という理由で少数派の意見を無視するのではなく、クラス会でも国会でも、しっかりと話し合うことが大切になってくるのです。
※イメージ写真は、立正大学法学部 早川誠ゼミの授業風景です